京都-土壁のトヨダヤスシ建築設計事務所-土と国産杉を使う住宅医の仕事

岩園の家

「この家、土壁ですよ!」調査員は叫んだ。土壁だからと言って驚くことはないのですが、実は、新築当初の設計図書にはグラスウール厚25との記載があり、まさかの発見でした。筋交いが図面通りでないことや、仕上げや間取りが違うことはこれまでにもあったのですが、壁自体の仕様があきらかに違うのは今回のケ―スが初めてです。一般的には土壁ではない方が、耐震断熱補強がやりやすいのですが、土壁がでてきたとなると一考しないといけません。以前、土壁の家を耐震断熱補強する際、構造用面材を規定どおり張るために、土壁を削り下地を入れるという方法を取らざるを得なかったのですが、土壁は無残な姿に。外部が大壁で隠れていたから良いものの、もし真壁だったら青空が見える結果になったかかもしれません。やはり、土壁はできるだけ壊さず補強するのが良さそうです。
この住まいは、芦屋市岩が平という地域に建つ、昭和48年に新築された土壁の家です。父母・夫妻・娘の5人で住んでおり、娘さんの婚約を期に、今住んでいる家の思い出を壊さないためにも改修という選択をされました。依頼当初は、2階書斎の収納だけを使いやすく改修する予定でしたが、住宅医によるインスペクションをきっかけに、生活環境・動線の改善に加え、耐震と断熱、バリアフリー改修を行うことになりました。ただ、南西の和室2室だけは、父母の希望で既存のまま残し段差のみ解消しています。

今回、土壁でできた既存住宅を新築同等に性能向上させ快適に暮らせるよう、鋼板サンドイッチパネルによる内張り改修を実践することにしました。土壁を改修する場合は、外張りが基本ですが、内装も改修する場合は費用も高額になる上、建物の状態や住まい手の意向もあり実現には至りませんでした。そこで、土壁はできる限り壊さず室内から補強し、どうしても撤去処分するしかない土は床に敷き詰めることで土の蓄熱性能を生かす試みとしました。鋼板面の仕上げは、下処理をした後、直接、漆喰や和紙を塗ることで調湿性を期待しています。
入居されてから1年分の光熱費を見せて頂くと、改修前後で約25%のエネルギーが削減でき、かつ、約14万円も光熱費が安くなっています。2013年、冬のLDKの室温は、未改修室と比べると、5~10度も高く維持でき快適とのこと。寒かった土壁の家が生まれ変わったことで、未改修だった和室2室も今秋以降に断熱補強工事をすることになりました。和室の内装は既存のままになるので、今度は土壁外張り改修です。改修すれば十分住める土壁の家が次々に解体・撤去される中、土壁の性能を最大限発揮できるのは、改修にある!といっても過言ではありません。

<建築概要>
所在地:兵庫県芦屋市
構造:木造2階建て
延床面積:176.85m2
1期工事:2012年6月完成
2期工事:2014年12月完成
意匠・温熱設計:トヨダヤスシ建築設計事務所
構造設計:TE-DOK
施工:中野工務店

<主な仕上>
構造材:紀州杉
造作材:吉野杉
天井:和紙貼り
床:唐松本実板張り
内壁:鋼板サンドイッチパネルの上、左官仕上(ジョリパッド、漆喰塗り)、和紙貼
外壁:既存ラスモルの上吹付け、(一部、土壁外張り断熱)
屋根:塗装/亜鉛めっき鋼板

<性能>1期工事完了時
平成25年基準
外皮平均熱貫流率UA値:0.84 W/m2K
平均日射熱取得率ηC値:2.4%
一次エネルギー消費量:590MJ/(m2・年)> 省エネ基準値 576MJ/(m2・年)
参考:178.48kwh/(m2・年)

※平成11年基準
熱損失係数Q値 :2.79 W/m2K
夏期日射取得係数μ値:0.062

<性能>2期工事完了時
平成25年基準
外皮平均熱貫流率UA値:0.62 W/m2K
平均日射熱取得率ηC値:1.9%
一次エネルギー消費量:561MJ/(m2・年)< 省エネ基準値 576MJ/(m2・年)
参考:178.48kwh/(m2・年)

※平成11年基準
熱損失係数Q値 :2.19 W/m2K
夏期日射取得係数μ値:0.048

<その他>
平成23年度長期優良住宅先導事業

(2015-07-01更新)

PAGETOP