土壁の呼吸とは?調湿と透湿とは?実測結果をもとに分析してみました。

最近、土壁の呼吸についての質問や問い合わせが増えてきました。

実測結果も踏まえて、少し整理をしてみたいと思います。以下は、セミナー等で使用した資料です。

まずは、土壁の呼吸について。

「土壁が呼吸しないからいけない!」というのがよくわからなかったので、家全体と壁単体とで分けて考えてみました。

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そもそも呼吸とは、家全体では、適切な窓の設計と換気計画によると考えています。

 

通風性をよくし、換気をすることで、家全体としては呼吸ができるといえます。

これは、間取りなどの計画の問題なので、土壁とは関係ありません。

プランをつくる設計力の問題です。

価格のみを追求する家は、これがおろそかになることが多いようです。

 

では、土壁単体で考えてみます。

呼吸とは、「調湿」と「透湿」に分類できそうです。

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こちらは、調湿の図です。

室内で発生した水蒸気は、土壁が吸ってくれて、時間が経過すると吐いてくれます。

これは、土壁を採用したときのメリットですね。

調湿は、結露対策にもなりますし、室内の湿度調整をしてくれます。

ただ、土壁も万能ではありません。

土壁が吸ってくれる量にも限界がありますし、瞬間的に大量の水蒸気が出た場合は土壁だけに頼るのは危険です。

 

次は、透湿です。

 

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冬の透湿をイメージしています。

室内で発生した水蒸気が、土壁を通過し断熱材も通過し、外部の通気から排出されます。

繊維系の断熱材の場合、水蒸気は通過しやすいのです。

一方で、繊維系の断熱材の外側に、面材を張る場合は、水蒸気が少しだけ通りにくくなります。

漏気対策や耐震性のからみで面材を張るケースが多いので、全体のバランスを考えて採用を決める必要があります。

調湿は、計算できません?が、透湿は計算できます。

面材を張っても内部結露に至らない仕様にもできるため、きちんと透湿しやすい仕様なのか計算するのがよいでしょう。

計算は、ほんの数分です。

 

 

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では、梅雨や夏に外部から侵入する水蒸気の場合(夏型結露)は、どうなるのか?

通気層を通って湿気が断熱材に入ります。そして、土壁を通過し室内へ。

実際に外部から室内へ水蒸気が通過していくかは不明ですが、防湿フィルムがないので夏型結露も起こりにくいようです。

 

結果として、外部から水蒸気が侵入しても、水蒸気が通りやすい構造になっていれば大丈夫そうです。

よく、繊維系の断熱材の室内側に防湿層を設けていますが、夏型結露の判定は、NGになることが多いようです。

なので、夏型結露のリスクを低減できる可変透湿機能ある防湿シートを使うようです。

土壁の場合は、土壁外断熱にすれば、防湿層が不要とできるので、フィルムに頼りたくない方にオススメします。

 

最後は、土壁の保湿性について。

これまでは計算値や設計値でしたが、次は実測による考察です。

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実測結果をわかりやすく図にしてみました。

室内で水蒸気が瞬間的に大量発生した場合、土壁が保湿してくれるので、土壁背面に入る水蒸気がほんのわずかでした。

実際は、断熱材と土壁の間に水蒸気が入っても、土壁が水蒸気を吸ったり吐いたりしているので、大きな被害になりにくいようです。

2年ほど実測した感触から判断するに、

常時、雨があたったり、漏っている状態じゃないと、周囲の木材が腐る可能性は低そうです。

 

また、断熱材が発砲系で水蒸気が通らない仕様であっても、また、構造用面材でふたをしていても、実際は、土壁の保湿力で大きな被害にはなりにくいと考えています。

 

ほんとかな??と思われる方は、ぜひ、透湿の計算と実測をしてみてください!