竹小舞土壁に断熱材を充填せず省エネ基準をクリアする方法(平成29年4月より)エネルギー消費性能計算プログラム(気候風土適用住宅版) 運用開始

昨年、公表されていたとおり、4月1日に、
エネルギー消費性能計算プログラム(気候風土適用住宅版) Ver 2.2.0が、実装されました。

アップされたばかりなので、どの行政も対応ができていないと思いますが、
気候風土適用を受けた住宅は、このプログラムで計算すれば省エネ基準をクリアできることになります。

気候風土適用を受けた住宅は、各行政によって仕様と基準が違うことになるとは思いますが、ざっくりいうと、これまで我が国で造られてきた伝統的な竹小舞土壁の家がだとおもってください。

 

ためしに計算をしてみました。

まずは、デフォルトの評価です。

UA=0.87W/㎡K (Q値=約2.7W/㎡K)です。

設計値84.3GJ 基準値80.7GJ
暖房設計13.9GJ 暖房基準13.4GJ
冷房設計6.0GJ 冷房基準5.6GJ
給湯と照明の省エネ性能を高めれば、クリアできそうです。
さすがUA=0.87W/㎡K (Q値=約2.7W/㎡K)です。

 

次に、UA=3.0W/㎡K (Q値=約8.46W/㎡K)です。

設計値142.6GJ 基準値137.3GJ
暖房設計74.6GJ 暖房基準72.2GJ
冷房設計3.7GJ 冷房基準3.5GJ

暖房設計エネルギーがぐぐぐっとあがりました。ただ、基準値もぐぐぐっとあがりました。

その差は、2.4GJ。

 

次に、UA=5.0W/㎡K (Q値=約13.86W/㎡K)です。

設計値211.3GJ 基準値205.4GJ
暖房設計143.9GJ 暖房基準140.9GJ
冷房設計3.0GJ 冷房基準2.8GJ

暖房設計エネルギーが、すごい数値に!でも、基準値もすごい数値に!!

その差、3.0GJ

 

次に、UA=9.99W/㎡K (Q値=約27.35W/㎡K)、評価できる限界値です。

設計値432.4GJ 基準値426.3GJ
暖房設計366.0GJ 暖房基準362.7GJ
冷房設計2.1GJ 冷房基準2.0GJ

暖房設計エネルギーが、とんでもない数値に!でも、基準値もとんでもない数値に!!

その差、3.3GJ

 

まとめ

UAを0.87から9.99まで変化させ、エネルギー消費量を計算した結果、

暖房と冷房のエネルギー消費量が増えますが、基準値も増えるため、実質的に断熱性を高めなくても省エネ基準をクリアすることができるようになりました。(換気、照明、給湯、その他は、UAを変化させても数値は変わりませんでした)

暖房エネルギーの設計値と基準値と差の最大は、3.3GJほどですので、照明や給湯など省エネルギーに取り組めば、基準をクリアすることができます。

伝統的な家造りをされたい方、内外真壁の土壁、数寄屋などは、気候風土適用住宅の認定を受ければ省エネ基準をクリアできるので朗報ですね。

 

ただ、数値だけをみると、エネルギー消費量がすごいです。

エネルギー消費が多くなることを頭に入れておき、実際住んでみて、エネルギー消費がどういう状態なのか把握することが大切だと思います。

特に、エネルギー消費が多い住まい手に、気候風土適用住宅の認定を受けることを勧めると、とんでもない浪費家庭になってしまいそうです。この判断は、設計者ならできますので、きちんと現在の住まいのエネルギー使用量を把握して、誘導してあげるのがよいかと思います。

 

あとは、どんなに外皮性能が悪くても計算し外皮の数値を把握すること!これが一番重要です。

「当該住宅の外皮面積を用いず外皮性能を評価する」というチェックも4月1日に実装されましたが、これを使っても省エネ基準をクリアできません!!

UAは、きちんと計算をするようにしましょう!

 

エネルギー消費性能計算プログラム(気候風土適用住宅版) 計算結果の表記について

気候風土適用住宅の認定をする場合、エネルギー消費性能計算プログラム(気候風土適用住宅版) Ver 2.2.0での計算結果は、

1,通常の省エネ基準値

2,気候風土適用住宅の認定の基準値

3,設計値

の3種の表示がほしいところです。

「通常の省エネ基準は、この数値ですが、気候風土適用住宅の認定を受けたので、この数値でクリアできています。でも本来は、この数値になってしまうので、日々の生活に配慮をしてください。」という説明もできそうです。

「気候風土適用住宅の認定の基準値をクリアできるからいいんだ!」と思われてしまうと、あまりよくないような気がしました。

 

気候風土適用住宅の認定、各行政の対応は?

エネルギー消費性能計算プログラム(気候風土適用住宅版)ができたことから、行政もその対応をせまられそうです。

比較的容易に省エネ基準をクリアできるようになったため、行政の気候風土適用住宅の認定は、少し厳し目にチェックされるのかと思います。

どういう流れになるのかは、各行政によって変わるので、今後、行政の対応は要チェックです。