Q値からエアコン台数を決める方法。エアコン1台だと室温は何度?。内外温度からQ値を算出する方法など。

大学の環境工学の授業が終わり一息つきました。昨年度から芸大2年生に15コマも教えているのですが、学生は実務をしていないので、Q値とかUA値と言ってもなかなか伝わりづらく、今年度は、身近なガスや電気、灯油などの光熱費・使用量から教えることにしました。ただ、外皮と一次エネルギーの計算の基礎は、我が国の脱炭素やエネルギー自給率の現状もあり、やっぱり知っておいてもらわないといけないので、パッシブデザインにからめて断熱の基本的なことを伝えました。

その際、授業に備えて作成した資料が、なかなかわかりやすいんではないかと思うので、一部を紹介したいと思います。

Q値からエアコン台数を決める方法。エアコン1台だと室温は何度?。内外温度からQ値を算出する方法。

タイトル回収です。

授業でQ値(熱損失係数)を教えたのですが、身近な事例で分かってもらおうと、打ち放し仕上の断熱性&ガラスの性能を中心に説明しました。おそらく、実務者も整理ができていない内容なので、きっと参考になるはず。「Q値がわかるとこんなこともわかる!」ということを、ざっくりした計算ですが紹介したいと思います。

  • 演習1は、「もしも、窓をアルミサッシ+シングルガラス  6.51 w/m2K、から、木製+トリプルガラス+ガス入  1.6 w/m2K に変更したらどうなるか?」
  • 演習2は、「もしも、外壁をRC打ち放し仕上げに変更したらどうなるか?窓は、トリプルガラスのままとします」
  • 演習3は、「もしも、窓が、アルミサッシ+シングルガラスに加え、外壁が、RC打ち放し仕上げだったらどうなるか?」

という問題です。
延床は、50m2です。学生への課題なのでわかりやすく小さめにしています。

 

Q値からエアコン台数を決める方法。

演習1は、Q値が2.74w/m2K。演習3は Q値が10.43w/m2K  です。エアコンはそれぞれ何台いるのか計算しました。

 
答えは、Q2.74w/m2Kが、2.8kwを1台。Q値10.43w/m2Kが、2.8kwを4台。

Q値×面積×温度差の計算だけなので、ものすごく簡単です。外が0度の場合、室温を20度に維持しようとすると、これだけのkwが必要になります。
(※学生に教える際、内部発熱や日射熱を含めると複雑になるので省いています)

 

エアコン1台だと室温は何度?

Q値は、先ほど計算した数値です。もし、家にエアコン2.74kwが1台しかない場合、室温が何度になるかの計算をしました。

  

下図を見てもらうとわかるのですが、AとBがわからないので、それぞれA=という計算、B=という計算に置き換えて室温を計算します。

答えは、Q2.74w/m2Kが、室温20度。Q値10.43w/m2Kが、室温5.25度。になりました。「エアコンをつけても寒い!!!なんでですか!」という質問に答えるために計算をしてみました。Q値を知ることは、ものすごく重要ですね。

 

内外温度からQ値を算出する方法。

次は、この問題です。「家のQ値っていくらなんだろう」という質問に対して、計算をせずにQ値を割り出す方法です。

 

今回は、Qがわからないので、それぞれ計算をしてみます。温度差なので、外気と室温の差を計算式に入れるのがポイントです。左の家は室温20度。右の家は、室温5度。1000wの暖房器具だけで、Q値がそれぞれいくつかになるのか?

結果は以下の通りです。内外温度と暖房器具の出力さえわかれば、ざっくりしたQ値がわかります。これ知っておくと便利です。

  

Q値から一次エネルギー消費量と光熱費を割り出してみました。

「Q値!Q値!って聞き飽きたわー!」って声もあがるのかと思ったので、Q値が変わるとエネルギー消費量がどのくらい変わるのか?光熱費は上がる?下がる?なんてことを紹介しました。

 
こちらが一次エネルギー消費量です。Q値が変わると、暖房エネルギーが大きく変化し、冷房エネルギーも上下します。

 
わかりやすく、光熱費にしてみました。
一年間でこれだけ光熱費が変わります。その差13万円/年。断熱性能があがることで、室温も高くなるのでうれしいですね。

Q値を知ることがものすごく重要!ということがこれでよくわかります。

  

まとめ

最後のレポート提出で、学生さんからそれなりのコメントを頂きましたので、一部を紹介します。学生の皆さん、ありがとうございました。来年度も教えることになったら、モチベーションをさらにあげていきます!
 

「最後に、環境工学の授業全15回を通して、何か意見・感想などあれば書いてください。(成績には反映しません。)」という質問に対してのコメントです。

環境工学という部分が初めにはどのような授業をするのかよく分からなかったが授業を通じてその概念を知ることができ、パッシブデザインというものとそれによるさまざまなエネルギー消費を効果的に作ることができるものなどを学ぶことができて有用でした。 ありがとうございます。

学生さん、コメントシートより。

初めて建築を通した省エネやエネルギーの勉強をしました。初めは、ついていけるか不安でしたが、環境問題や建築はここをこう工夫することによって省エネになるのか!などたくさんの発見を得られる事ができたので今ではとても良い経験、知識を得られたと思います。また今後自分達の授業で先生に教えていただいた事を活かし素晴らしい建築ができるよう頑張っていきたいです。

学生さん、コメントシートより。

全15回の講義を通して、建物を設計するにあたってパッシブデザインなどの知識がなかったのでとても興味を持つことができました。また新たな視点から物事を見ることができてとても面白かったです。特にシミュレーションが面白く、意匠設計をするにあたってもさまざまなスタディができて面白いなと思いました。

学生さん、コメントシートより。

難しい話も多くついていくのに精一杯でしたが丁寧に何度も話してくださり今までの私にはなかった新しい視点を得ることができました。
全てを理解することはできていないかもしれませんがこれから建築を考えていう上で重要なきっかけになりました。ありがとうございました。

学生さん、コメントシートより。

正直なところ、自分はエネルギーや環境についてあまり関心がありませんでした。しかし、あまりにも学ぶことが多すぎて本当に為になる授業でした。まずエネルギー使用量を減らすためには我慢が必要だと思ってましたが、断熱が一番重要だとは思ってもいませんでした。そこを知れたのが一番の学びかもしれません。自分が関心がなければ知ることがなかったのかと思うと、この授業を受けて本当に良かったと思います。

学生さん、コメントシートより。

建築をデザインする上で重要なことを学べた授業内容だったと思います。これから先、大学の課題や仕事上で住宅を設計する際に考えなけれいけないことを学べたと思うので、生かし行ければ良いなと思います

学生さん、コメントシートより。

断熱の必要性をすごく感じられたので将来家を建てることになったら必ず断熱のことは、しっかり考えようと思いました。

学生さん。コメントシートより。

建築を学ぶ中で、環境工学という面であまり考えたことがなかったので大変貴重な経験になったと同時に興味関心を持つことができた。本講義で得た知識を大切にこれからの設計課題の取り組みにも活かしていけるように頑張ります。
 全15回の講義ありがとうございました。

学生さん。コメントシートより。

 
以上、こんな感じでした。
授業は、オンラインなので、パワポ中心の授業なのですが、レポート(文章や本)のような形にしないとわかりづらいようでした。来年は、そのあたり改善していこうかと思います。