1.なぜ、気密測定をしているの?

 元々は、当事務所の設計した住宅が、どの程度の気密性能なのか把握するために15年ほど前から気密測定を行ってきました。というのも、家の断熱性能をあげても、隙間が多すぎると冬期に思ったより室温があがらず「少し寒い!」という声があったからです。かつ、現場製作の木製玄関戸や大きな木製窓なども多くあり、実際に気密測定をしてみると、そこからの隙間風がものすごく顕著でした。そういった伝統的に作られてきた住まいが、隙間風が原因で失われていくことを懸念して、これまで気密測定を行いつつ少しずつですが対策を講じてきました。これが、当事務所の気密測定の始まりでした。

 

 

 ただ、昨今、「漏気の原因になる隙間を把握したい」「気密性能のC値がどのくらいか知りたい」という声が実務者からあがり、又、気密性能の効果を実感した住まい手がツイッターなどで発信するようになってきたため、当事務所だけの測定を行うのではなく、他社の設計事務所さんや工務店さんからの依頼も測定をさせて頂くことに致しました。C値も0.2cm2/m2まで到達することができる仕様が確立できたので、気密測定歴15年の知見を踏まえて測定とアドバイスができればと考えています。

 

 

2. 気密ってなぜ必要なの?

気密の必要性は以下の4点です。

1)健康で快適な室内居住環境を実現するため
2)計画的な換気をするため
3)壁内結露を防止するため
4)熱損失を少なくするため

それぞれ重要な項目ですが、実情は「冬期に隙間風が入ることで室温があがらず寒い!」というのが、住まい手が一番不安視することでしょう。

一例ですが、「キッチンに立って料理をしていたら、足元がスースーする」ということで調べてみたら、床を貫通する排水管の周囲に隙間があり、そこから冷気が侵入していました。当然ながら、隙間があるということは、ゴキさんも侵入してくる可能性があります。。見つかってよかったです。又、エアコンなどは、入居時に設置することから冷媒管の穴なども要注意です。気密測定機を動かすと、こういった穴から風が勢いよく侵入してくるので隙間を発見できます。

 

 

 

3. 工事中の気密処理と測定について。

気密処理は、工務店さんが行います。工事中の気密テープやコーキング、ウレタン吹き付けなど、気密の取り方は様々で、設計手法や工務店さんのやり方で進めてもらい、玄関戸とサッシがとりつき、天井・屋根、壁、床、基礎の気密化が完了した時点で、当事務所で測定を行います。配管や配線貫通部は、気密に重要な箇所ですので、それらの工事が終わった後に測定を行う方がよいです。

 

 

現場製作の建具やFIXガラスがある場合は、取り付けが竣工前になることも多く、工事中はプラボードで仮養生していただきます。外部面材で気密をとっている場合は、室内側の防湿シートや柱間断熱材を充填しなくても測定が可能です。ただ、スリーブなどの貫通部は取り付け必須です。スリーブ取り付け後、外部側は、空気が入らないように養生テープで塞いでいただきます。

 

 

4. 工事中に煙試験を行い隙間を確認する場合。

工事中は、住まい手や工務店さんの希望で、煙試験で隙間を確認する場合もあります。隙間風は、手をかざしたり、ティッシュなどの軽いもので風を感じ取るのですが、隙間を全てを把握するのは難しいです。そういった場合、煙試験を行い、室内に煙が侵入するかどうかで、建物に隙間があるかどうかを把握します。それなりに気密化ができていることが条件にありますが、視覚情報で把握できるのでとても有効な方法です。

 

 

 

5. 竣工時の気密処理と測定について。

竣工時は、気密性能C値を計測・算出します。C値とは、相当隙間面積αAを床面積で割った数値で、計測した建物で、1m2あたりどのくらいの隙間面積(cm2)があるのかを把握できます。

気密測定機では、相当隙間面積αA が計測されるので、C値を算出する計算式としては以下のようになります。

計算式C値結果
例1)相当隙間面積αA 50cm2 / 延床面積100m2 = 0.5cm2/m2C値0.5cm2/m2
例2)相当隙間面積αA 55.9cm2 / 延床面積147.49m2 = 0.37900・・・cm2/m2C値0.4cm2/m2(少数第2位四捨五入)

 

 

 

6. 竣工時に隙間を確認し、目張りをして再測定をする場合

気密測定の目的がC値の測定・算出だけではなく、家の隙間を把握したいという方は、気になる個所に目張りを行い測定を行います。「どこから隙間風がたくさん入っているのか?」「その隙間風が工事によって治せるものなのか?」「家の造り上やむを得ない箇所なのか?」等々を、把握することがものすごく重要になります。

例えば、コンセントから隙間風を感じる場合は目張りをし再測定をしたり、又、現場製作の玄関引き戸がある場合、ここからの隙間風がどのくらいあるのか、目張り前後で測定し、C値の差がどれくらいあるのかを掴みます。

プロの実務者にとっては、これがものすごく重要で、これを繰り返すことで気密処理のレベルアップへつなげていきます。

 

 

7. 既存住宅やリフォーム時などで、C値や数値にとらわれず、とにかく隙間を埋めたい方にも気密測定は有効

「今住んでいる家は、築5年の家だけど、なんだか寒い・ひんやりする・隙間風を感じる」など、不快感を感じることがあります。気密測定をしてみると、点検口から冷気が侵入していたり、排水管のパッキンが緩み冷気が侵入していることも多々。比較的新しい家の場合は、下写真のような措置をするだけでも、冷気を感じることが少なくなります。

又、リフォームで気密処置をする場合は、C値にとらわれすぎると気密処理の手間や費用だけがかかってしまうことも。気密測定を行い、隙間探してそれらを塞ぐことで、足元からくる寒さを改善し、快適な室内居住環境へとつなげることができます。

 

 

8. 測定費用と測定時間

測定費用は、建築工事中と竣工時とそれぞれ分けて設定しています。工事中のみ、又、竣工時のみ、それぞれで依頼することも可能です。

測定時間は、建物の規模にもよりますが、1棟で、2~3時間です。竣工時に目張りの有無で測定を行う場合は、プラス1時間程度必要になります。

測定内容と特典 (2023年11月2日更新)測定費
A、建築工事中の気密測定 1回/1棟55,000円(税込) +交通費実費分 **)
B、竣工時の気密測定 1回/1棟 55,000円(税込)+交通費実費分 *) **)
<特典1> 住宅医スクール修了生、会員限定
住宅医協会が主催する住宅医スクールを、修了された方(修了予定の方)、又は、住宅医協会正会員は、特別割引をさせていただきます。詳細は、お問い合わせください。
要問合・応相談
<特典2> 設計監理の依頼を頂いている住まい手限定
気密測定費用とその交通費は、別途頂いておりません。
0円 (無料)

*)竣工時は、工事中にも同物件でご依頼頂いている場合は、同物件割引として49,500円(税込)とさせて頂いています。
**)京都事務所と、大阪サテライトオフィスMOKSOHOから25km圏内は、交通費実費分は無料とさせていただきます。

当事務所は、基本的に気密測定を行うだけなので、気密処理やプラボードの仮養生、スリーブの目張りは行いません。ご注意ください。

詳しくは、以下からお問合せください。

  

お問い合わせ

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9. 最後に

私が最初に気密測定を実施したのは2008年頃に完成した住宅。玄関戸は、現場製作の木製引戸、窓はアルミ樹脂、壁は外張り・床断熱で、C値は2.67cm2/m2という結果。それからいくつもの住宅を設計し、15年間コツコツ改良を重ねて、ようやく今設計している新築住宅でもC値を0.2cm2/m2まで高めることができました。長い道のりでしたが知見がすごく深まりました。誰かに一番コスパがいい方法を聞いて実践するのが早くて効率も良いのですが、自分の目で見て、自分で測定するのが大切なのかと思っています。

  

昨今、C値は、「できれば0.5cm2/m2以下とし、最低でも1.0cm2/m2以下としてほしい」と希望されることが多いです。

C値を0.5cm2/m2以下にできるかどうかで、工務店やハウスメーカーを決める住まい手も増えているので、住まい手から「気密・C値はいくらですか?」と聞かれたら、堂々と「うちは、0.5cm2/m2以下がとれます」と言えるようになるのがベストです。

また、今後は、リフォームでも漏気(隙間風)を改善してほしいという希望が高まる可能性があるため、まずは、新築で気密化ができるようにしておくことをオススメします。

 

 

<更新履歴>

231102 測定費用の項目を追加
230516 文言一部修正