美濃加茂市に建つ築100年の古民家を二世帯住宅にリノベーションしました。「先祖が残してくれた大切な家なので壊したくない」という、住まい手の強い気持ちからこのプロジェクトは始まっています。この家は、築100年の建物なので、基礎は玉石や延べ石、壁は土壁、屋根の瓦は新築されてから一度も葺き替えしていません。断熱性も低く、高齢者対応もできておらず、劣化事象も起こっています。建物自体は、骨太で全体的にとても上等な仕上げで造られていましたが、次の世代に引き継ごうと思うと、やはり現代の知見を元に改修するのがベストです。ということで、耐震、断熱、防火、高齢者、劣化、維持管理の6つをバランスよく治療できるリノベーションを実践しています。

古民家でまず検討しなければいけないのは、基礎をつくるかどうかですが、今回は、雨や白蟻等の劣化対策、耐震性の向上を優先するため、コンクリートの基礎に造りかえています。ただ、これだけの大きさの建物を持ち上げたり、曳家をするのは難易度が高いため、そのままの状態で基礎を造る方法を採用しています。耐震性能は、建築基準法が厳しくなってきていることから、現在の基準同等まで性能を高めるため、壁や床、屋根は構造用面材で耐震補強をし、横架材の外れ止めなどを行っています。同時に、冬暖かく夏涼しい家にするため、壁・床・屋根に断熱補強を行い、性能を数値で示しています。
バリアフリーや住まい方の提案も行い、住みやすく使いやすい住まいへ変身。2010年1月、1世帯から2世帯住宅へ生まれ変わっています。

<建築概要>
所在地:岐阜県美濃加茂市
構造 :木造2階建て
主用途:専用住宅
延床面積:289.95m2
竣工:2010年1月竣工
設計:トヨダヤスシ建築設計事務所
施工:鈴村建築株式会社
築年数:築100年 大正元年~2年頃新築

<主な仕上>
造作材:杉
天井:石膏ボードの上、EP塗/杉パネルの上オスモ塗り
床:桧本実板張り
内壁:既存土壁の上、漆喰塗り/石膏ボードの上、EP塗
外壁:杉本実板張り/2階一部既存のまま
屋根:いぶし瓦葺き

<性能>
平成11年基準 改修前—->改修後
熱損失係数Q値 :6.35—->2.53 W/m2K
夏期日射取得係数μ値:0.135—->0.033

常時微動測定
東西方向 3.125Hz—–>7.324Hz
南北方向 3.320Hz—–>8.105Hz

<その他>
木造建築病理学・「既存ドック」システム:超長期住宅先導的モデル事業
建設住宅性能評価(既存住宅)取得
化学物質の室内濃度測定 0.005ppm < 指針値0.08ppm