なぜ、ルワンダ?こんなことを考えたわけ
我が国で親しまれてきた伝統的な竹木舞土壁の家ですが、戦後の高度成長期のあおりを受けて、どんどん施工棟数が減ってきています。2015年時点で、著名な左官職人さんでさえ、1年で1棟、土を塗れるかどうかという話も聞きます。さらに5年後の2020年には、省エネルギー性の義務化が控えているため、土壁の家にとっては大きな転機となりそうです。生き残ることができるのか、消えてなくなってしまうのか。
そういった背景もあり、日本の土壁の家に断熱材が必要なのかを解く一歩とするため、「もしも、ルワンダに日本の土壁の家を建てたら」というシミュレーションをしてみようと考えました。
ルワンダのように、温暖で気温が安定している地域に断熱材が必要なのか?日本の土壁の家にも断熱材が必要なのか?
何かの参考になればと思います。
もしも、ルワンダに日本の土壁の家を建てたら。
Tハカセ「日本で親しまれている土壁の家を、ルワンダに建ててみるとどうなるかシミュレーションしてみたよ。」
みなみ「てか、ルワンダってどこ?」
Tハカセ「アフリカ大陸の中心部、西にはコンゴ、北にはウガンダがあるよ。日本からだと、飛行機を乗り継いで35時間ぐらいはかかるかな」
みなみ「どうして、ルワンダなの?」
Tハカセ「2010年5月に、ルワンダに訪れる機会を頂いたんだよ。アフリカって灼熱で砂漠、植物が少ないというイメージがあるけれど、ルワンダはそんなこともなく、温暖で快適な気候なんだ。年中気温が、20度前後という国だし、そんな国にも断熱材って必要なのか?その地に、日本の土壁の家を建てたら室温がどうなるか、みてみたんだよ。」
みなみ「ルワンダの家って、日本みたいな木の家?それとも石の家?」
Tハカセ「いやいや、土の家だよ。1枚施工中の写真を紹介しよう。日干しレンガをつくってそれを積んで壁にするんだよ。木は、屋根の梁として利用するぐらいかな。まあ、全てがこういった家ではなく、都市部では鉄筋コンクリートのビルもつくられているから、田舎の家という感じでみてもらえればよいかな。」
みなみ「写真を見る限り、日本で使われている断熱材というものはなさそうだけど、土だけでも問題がないということ?」
Tハカセ「良いところに気が付いたね。そうなんだよ。土だけなので、断熱材と呼ばれる物は使用していない。日本のように夏は暑く冬は寒いという環境であれば、その中に住む人が快適に過ごせるように、断熱材というものを使うんだけど、ルワンダの気候は、年中20度前後だから、断熱材って必要なさそうだよね。」
みなみ「シミュレーションした結果、どうだったの?」
Tハカセ「下記の、4種類の仕様でシミュレーションしてみたよ。」
1、ルワンダの土の家(赤)
2、日本の高断熱の家(青)
3、日本の一般的な新築住宅(緑)
4、断熱化した日本の土壁の家(橙)
5、外気温(ルワンダの気温を想定し、関西の5月の気温とした)
Tハカセ「結果を見ると、家の室温は、20度~41度を推移している。自然室温なので暖冷房器具はもちろん使用していない。」
みなみ「日本の高断熱の家は、少し室温が高くなるんだね。その他は、快適に過ごせそうかな?ルワンダの土の家(赤)は、日本の一般的な新築住宅(緑)や断熱化した日本の土壁の家(橙)より室温が少し低いみたいだけど。」
Tハカセ「そう。それが土壁の蓄熱効果なんだ。」
みなみ「蓄熱?!なにそれ?」
Tハカセ「土は熱容量が多く蓄熱してくれるから、最高温度と最低温度がやわらぎ、室温が安定するんだよ。」
みなみ「そうなんだ。土ってすごいのね。土って自然のものだし、世界中どこにでもあるし。」
Tハカセ「シミュレーションを見てみると、結局、土だけの家でも断熱を施した家でも、どちらもうまく住まうことで快適に過ごせるだろう。ただ、工事費用のことを考えると、土だけにした方がもちろん安いしつくるのも簡単。」
みなみ「じゃあ、日本で、ルワンダのような家を建てたらどうなるのかな?」
Tハカセ「冬は断熱材がないのでとても寒いだろうね。そして、夏はそこそこ暑くなるけど蔵に入った時の涼しさはが発揮できそう。日本は、夏と冬の対策をしなければ快適に過ごすことができない。良し悪しはあるけれど、日本の家は、日本人が考え出した進化なんだろうね。」
みなみ「最近、軒や庇がない家や、土壁じゃないビニールクロスの家が多いようだけど。大丈夫なの?」
Tハカセ「色々考え方があるようだけど、戦前の家のほうが気候に順応できる純粋な家だったように思う。ただ、現代に生み出されたすばらしい素材もあるし、それらと融合していくのも面白いだろうね。」
みなみ「ところで、なんで、こんなシミュレ-ションしたの?」
Tハカセ「日本では、土壁の家が大好きな方が多いんだ。温暖な地域で土壁の家を建てるのと、ルワンダで土壁の家を建てるのと比較するのが、断熱材の有無をイメージしやすいかと思ったんだ。ただ、日本の温暖な地域であっても、寒い・暑い時期があるので、どの季節が快適に過ごしたいかが重要になってくるね。」
みなみ「そうなんだ。なかなか、興味ぶかいね。」
(2015-07-31更新)
(2014-03-27更新)
(2014-03-11更新)
(2012-06-26記)