左官素材(土壁、漆喰等)物性値を整理。熱伝導率、透湿比抵抗、熱貫流率、容積比熱、密度、蓄熱有効厚さ等
左官素材関係の物性値
左官素材関係のみ物性値をピックアップしました。
熱伝導率、透湿比抵抗、熱貫流率、容積比熱、密度、蓄熱有効厚さ等の数値をどこから抽出したのか出典も併記しています。
オレンジでマークしている部分は、平成25年基準&平成28年基準で変更があった素材です。出典元は、数字が小さいほど上位となります。
元データは、岐阜県立森林文化アカデミー 辻先生の環境サポートツールです。濃いオレンジ部分のみ、私の方で最新の数値に置き換えています。
蓄熱有効厚さは、熱容量の計算をする時に使用できます。
2016年に新しく改定された自立循環型住宅への設計ガイドライン温暖地版には、「日射熱の利用」という、土壁のパッシブソーラー効果を評価できるのですが、ここでこの蓄熱有効厚が必要になってきます。2016年版から「意図的に追加した材料が対象」となり、土壁の熱容量だけを計算すれば良いことになったので評価のハードルが下がりました。
平成25年基準(平成28年基準)蓄熱有効厚さ
平成25年と平成28年省エネルギー基準に準拠したプログラムでは、以下の有効厚さを使用します。
低炭素認定住宅や長期優良住宅等の省エネルギーの申請で、土壁の蓄熱評価をするためには、地域による条件をクリアした上で、
「蓄熱部位の熱容量が当該住戸の床面積当たり170kJ/(m2K)以上の熱容量の増加が見込まれる材料を蓄熱部位に用いていることが条件」
となります。
2016年4月4日の段階では、自立循環型住宅への設計ガイドライン2016温暖地版と平成25年基準(平成28年基準)とでは、蓄熱性能の計算方法が違うので注意が必要です。計算の元となる物性値はどちらの評価も下表1を使います。
左官素材における容積比熱と有効蓄熱厚さの変遷と比較
容積比熱と有効蓄熱厚さは、平成25年基準ができたころから数値が変わりました。左官素材に関しては、物性値が統一され、自立循環型住宅への設計ガイドライン2016温暖地版も平成25年基準も同じ数値が使用されています。
一方で、自立循環型住宅への設計ガイドライン2016温暖地版の木材の熱容量は、天然木材以外に、マツや杉、ヒノキなどの物性値が記載され、詳細に評価できるようになっています。
変更後
平成25年基準(平成28年基準)
自立循環型住宅への設計ガイドライン2016温暖地版
漆喰 容積比熱 1400 J/(L・K) 有効蓄熱厚さ 0.13(m)
土壁 容積比熱 1100 J/(L・K) 有効蓄熱厚さ 0.16(m)
セメント・モルタル 1600 J/(L・K) 有効蓄熱厚さ 0.23(m)
せっこうプラスター 1600 J/(L・K) 有効蓄熱厚さ 0.09(m)
変更前
自立循環型住宅への設計ガイドライン温暖地版、蒸暑地版、準寒冷地版
住宅の省エネルギー基準の解説(平成21年5月1日第3版)
しっくい 容積比熱 1381 KJ/(m3・K) 有効蓄熱厚さ 0.13(m)
壁土 容積比熱 1327 KJ/(m3・K) 有効蓄熱厚さ 0.17(m)
モルタル 容積比熱 2306 KJ/(m3・K) 有効蓄熱厚さ 0.12(m)
プラスター 容積比熱 2030 KJ/(m3・K) 有効蓄熱厚さ 0.07(m)
素材の熱抵抗と熱容量の比較
新建材がない時代を想定し素材を抽出し、熱抵抗と熱容量をグラフで比較しました。
こういった素材しかない時代は、畳も断熱材材になりますし、木組の壁も性能がとても高かったということがよくわかります。
畳床がこれだけ断熱性能があるのですから、茅葺きの屋根は、すごい性能だったと想像もできます。
熱容量は、やはり土壁とレンガが一番。
壁にレンガを使う国、土を塗る国があるように、素材の熱容量をうまく生かすことで快適な家をつくっていたのでしょう。