竹小舞土壁のつくりかた、全部見せます@豊田左官仕様

竹小舞土壁のつくり方(京都)を紹介します。これらは、超高級な仕様ではなく、安価な仕様でもなく、一般的に行われているレベルの土壁の仕様(豊田左官仕様)です。

過去のブログを見ていると、竹小舞土壁のつくり方をアップしていなかったので、講演資料の中から抜粋して紹介します。

他の左官職人さんと違うやり方かもしれませんので、参考としてご覧いただければと思います。

 

0、竹小舞掻き

まずは、竹小舞掻きです。竹小舞くみという方もいます。

 

エツリ竹(間渡し竹)と小舞竹が同じサイズなのは、「今は、大きな竹と小さな竹を区別して販売していない」と竹屋さんが話をされていましたので、同サイズになっています。他の地域では竹に大小があったり、丸竹であったりします。

 

これは縦貫です。縦貫は、土を塗ると重みで下がるので、土台と縦貫下部とは隙間をあけておかないといけません。下写真は、縦貫の位置出しをしやすくするため、プレカットでホゾ加工をしてもらいました。貫は少し浮かしてあります。

通常は、土台にホゾあけせず、縦貫が土台から1-2cm浮かせています。

父は、「昔は、農家の方が組んでいた」と言っていました。一方で、大学でもお世話になっているA氏とH氏は、「大工の丁稚が掻いていた」といっていました。昔は、神社仏閣周辺に職人が集まって住んでおりメンテナンスをしつつ、農業していたという話もあるので、どちらの話も繋がります。

 

1、荒土塗り

竹小舞が完成したら荒土を塗ります。今回は、両面同時に塗る手法を採用したので、外部側から塗っています。

 

荒土は、深草の土を業者さんに持ってきてもらいます。寝かした荒土に新しい荒土を混ぜて現場まで持ってきてくれるので、在庫を持たなくてもよいので助かっていますが、これからは難しいかもしれません。

荒土に入っている藁すさを集めるとこれだけの密度があります。

 

荒土到着後は、塗りやすいように、荒土を足でふみ柔らかくし、10cm程度にカットした藁すさを混ぜます。

 

古い藁すさは、発酵することで繊維質が土に馴染み、かつ、新しい藁すさを入れるとコンクリートの鉄筋のような役割があるので割れや剥がれを軽減できます。

土とスサが入った荒土を竹小舞に塗ることで、竹の隙間からはみ出させ、絡みつかせることで下地にガッチリくらいつき、脱落防止対策になります。

 

2、裏返し

荒土を塗ったあとに、その裏面を塗ることを「裏返し」と言います。材料は、荒土と同じ材料です。

 

荒土塗りで紹介したとおり両面同時に塗る「でんがく」という方法を採用したので、外部を塗ったあとに室内側を塗っています。通常、室内の横貫には、荒土を塗りません。今の段階で塗ってしまうと、周囲の収縮性が違うので、剥がれの原因になります。

熟練の職人には、貫伏せも同時に行うツワモノがいます。

 

両面塗る「でんがく」という方法は、土の粘性土によって採用できるかどうかの可否があります。また、両面同時に塗るので、表を塗ったあと、土がはみ出た部分を適度にならしておく必要があります。ならしておかないと、裏返しをしたあとに、反対面の土がデコボコ膨れてしまい、直すのに手間がかかります。

地域によっては、両面同時に塗るほうがよいという左官職人さんもいれば、片面を塗ってきちんと乾かしてから裏面を塗るという方もいるので、やり方は色々あるようです。

豊田左官は、地域性や材料、工期にあわせて塗り方を変える派です。

3、貫伏せ

裏返しをした後、貫部分を塗ることを貫伏せと言います。下の写真は、父のアイデアでは、割れどめのために石膏を塗ってみました。これは特別仕様です。

 

貫は、見付105mmほどの木材です。木に土は引っ付きにくいので、割れや剥がれの原因になることがあります。一般的には、寒冷紗や和紙、藁すさを伏せ込み割れを軽減する措置をとります。

 

剥がれや割れを避けるため、刷毛で水を染み込ませてから貫伏せを行います。木と土は接着度が弱いため、上下の荒壁と密着させるため行います。

 

土は、荒土ではなく、中塗り土を使います。荒土と中塗り土の違いは、以前に書いた記事をご覧ください

荒壁土と中塗土は何が違うのか?

 

貫伏せは、貫部分のみに塗るので、この部分だけ土が盛り上がります。

写真は、割れドメのため石膏を塗りました。

 

4、ちゅうごめ(むら直し、おお直し)

貫伏せで貫部分が盛り上がったので、他の部分に土を塗り、平滑にするための作業「ちゅうごめ」を行います。土は、中塗り土です。

「ちゅうごめ」という呼び名は、父が「爺さんがそういう風によんでいたのでそう言っているんや」と言っていたので、私達はちゅうごめと言っています。一般には、むら直し、おお直しと言います。

 

中塗り土は、荒土のスサよりも細かな藁スサを使います。

ちゅうごめの場合は、 刷毛で 荒土に水を染み込ませ、水を少し吸わせた状態にすることで中塗り土を塗ると塗りやすくなります。

熟練の職人は、中塗り土の水分量を調整することでその手間を省くことができます。

 

チリ付け

チリ付けは、柱と土壁に隙間があかないようにするための作業です。ひげこや暖簾を使うことで、木と土の乾燥収縮による隙間があかないようにします。

手間がかかる仕事なので、上等な仕事でしか行っていません。最近は、柱にチリ决りを入れることも多く、豊田左官も目にする機会が減ってきました。

 

チリ部分に、ひげこや暖簾を取り付けた後、中塗り土でチリ付けをします。チリ廻りに土を塗り、ひげこや暖簾を伏せ込み、押さえていきます。

朱色の墨は、水に濡れると消えるので、表にでてくることはありません。大工さんは、黒色の墨。左官屋さんは朱色の墨を使います。

 

5、中塗り

ちゅうごめが終わったあと、中塗り土を塗ります。中塗土は、短い藁すさを使い砂を混ぜるので粘性土が弱くなりますが、荒土よりも塗りやすくなります。

この段階で、ある程度平滑にしておかないと上塗りが綺麗に仕上がりません。

 

中塗土は、余った荒土を使うこともできます。余った荒土を篩(フルイ)にかけ、大きな藁すさと小石を除去します。

 

中塗りに使う砂も、篩(フルイ)にかけます。

 

篩(フルイ)にかけるとわかりますが、砂にも大きな骨材が混ざっています。大きな骨材があると、壁に塗った際、引きずって綺麗に塗れないので、取り除いておく必要があります。

 

篩いにかけた荒土と砂に、中塗り用のスサを入れて混ぜます。中塗り用のスサは、思っているよりたくさん入ります。

 

練上がると、こんな見た目です。荒土の乾燥状態によって、中塗土の水分量を調整するので、練上がりの完成度は様々です。

 

よく、「古土を再利用すると塗りやすい!」という話を聞きますが、古土は、荒土と砂入りの中塗り土が混ざったものなので、塗りやすくなるのは当たり前ともいえます。ですので、古土をそのまま、荒土として使うのではなく、粘性土の高い荒土と混ぜて使うほうがよいと思われます。

 

古土は、上塗りが漆喰や繊維壁などの場合、それらを除去しなければいけないので、手間がかかります。再利用をするならば、上塗りが施されていない土壁を再利用するのが良いかと思います。

 

6、仕上げ

最後に仕上げの上塗りです。漆喰を使ったり、土を使ったり、あるいは、予算の関係で仕上げをしないという選択肢があります。昔は、冠婚葬祭時に上塗りをしたり、また、客間以外は仕上げをしないという選択肢もあったようです。

 

下地が土なので水引が早く、一度、水持ちが良い素材で下こすりをしてから上塗りをします。

 

漆喰の場合は、砂漆喰で下処理を行い、漆喰で上塗りをします。
水ごねの場合は、糊ごねした土で下処理を行い、追っかけて水ごねの土を塗ります。

漆喰や水ごねの材料の説明は、こちらを参照ください。
土壁や漆喰等の左官素材は、何からできているのか?

 

豊田左官の漆喰は、できるだけ既調合を使わないようにしています。調合方法を忘れないように、石灰に粉角叉を入れ、スサと骨材を混ぜて塗っています。

 

私達が土を塗る場合は、糊差仕上げとしています。左官屋さんによって、水ごね派や糊ごね派がいるそうです。

南禅寺の家の和室は、本聚楽を塗り、エネマネハウスまちや+こあや、某社モデルハウスなどは、黄土を塗っています。

本聚楽土、南禅寺の家より
まちやこあで使用した黄土

 

左官屋さんは、材料を塗る時に水引・水持ちを気にされます。水が引く(水持ちが悪い)とは、乾いた土の上に塗る場合、水分をどんどん吸い込んでしまい、塗ったところがすぐに乾いてしまう現象です。塗ったところが乾いてしまうと、塗りムラになってしまいます。

綺麗に塗るためには、水持ちが良いほうが塗りやすいのです。

本聚楽糊差し仕上げ、下塗りは水持ちをよくするため、糊を多めに入れる。

 

まとめ

以上、1-6が、豊田左官で行っている土壁が完成するまでの工程です。

京都でも、家を土壁で新築する方は、ほとんどいなくなっています。土壁に興味を持っていただき、採用したいという方のために、私達の土壁の作り方が、家づくりに参考になれればと思います。

 

土壁は、現地付近の土を使うことが多いので、地場の左官屋に伝承されている施工法を行うほうがよいのですが、最近は、荒土屋さんも県に1軒あるかどうかという話も聞きます。もし、他の遠方の地域から土を持ってくる場合は、土の産地に近い左官屋さん、もしくは、土を納材してくれた荒土屋さんに聞くほうが確実です。荒土の粘性土が高い地域は、真土を入れて粘性土を調整するという話も聞きますので、少し注意をしておいたほうがよいでしょう。

 

土は、地域性もあるので難しい素材ではありますが、均一でもないので、とても面白い素材です。

家のリビングの壁1面だけでも良いので、ぜひ、土壁を!!!

 

 

 


土壁は、「どんな素材があるのか?」「土の蓄熱効果は?」「今も土壁つくれるの?」「土壁と断熱を組み合わせる理由は?」など、よくわからない点が多くハードルが高いと感じませんか?そういう思いからWEBの情報を、家族みんなで共有できるように、住まいづくりハンドブックをつくってみました。土壁の家をつくってみたい住まい手は、資料請求フォームから「住まいづくりハンドブック」(無料)をお申込みください。

 

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(更新状況)
230620 文言追記
210308 リンク先5つ追加
210129 WPバージョンUP、テーマ更新により、バナー修正
200822 木小舞リンク挿入
200214 ハンドブック追記
191011 一部文章と写真を修正 
191010 写真、説明文追加
191009 作成

竹小舞土壁のつくりかた、全部見せます@豊田左官仕様” に対して2件のコメントがあります。

  1. 杉原賢一 より:

    自然な住まいづくりのバンドブックを、参考にしたいと思っております、よろしくお願いいたします

    1. toyo より:

      住まいづくりハンドブックは郵送のみとなりますので、恐れ入りますが、資料請求フォームよりお申し込みください。宜しくお願い致します。

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