木と土壁の家で、気候風土認定住宅やゼロエネルギー住宅、低炭素建築物認定、長期優良住宅の認定を取得する際のチェックポイントを紹介します。

木と土壁の家は、省エネルギー性が最重要チェックポイント

気候風土適応住宅や低炭素建築物認定、長期優良住宅の認定、ゼロエネルギー住宅それぞれに関わってくる基準は「省エネルギー性」です。
ここでネックになりそうなのは、木製建具と土壁ですが、性能は定量化し評価できるようになっているので、それほど心配しなくて大丈夫です。

建具の性能は、木製建具=樹脂製と、高評価が可能。

木製建具は、次の数値を使い評価が可能です。

熱貫流率
W/(m2K)
木製LOWE複層 A10以上 2.33
木製LOWE複層 A5以上A10未満 2.91
木製複層 A10以上 2.91
木製複層 A6以上A10未満 3.49
木製単板 6.51

これらの数値は、ハウスメーカーが採用しだしている樹脂製サッシと同性能であるため、木製建具だから、低炭素建築物認定や長期優良住宅の認定が取れないということはありません。一般的な住宅は、アルミサッシが多く使われているため、木製建具が使えるのか不安になりますが、性能は、木製建具=樹脂製サッシですのでご安心ください。


この数年、省エネサポートセンターは、「地場の建具屋さんがつくった木製建具は別表第7の数値を使っていけない・認めない」という回答だったようですが、先ほど電話があり認める方向に変わったようです!省エネサポートセンターが、国交省に確認したところ「認めて良い」との返事だったとのこと。ただし、別表7に無い仕様の場合は、評価方法がないため評価機関の判断に委ねられることになりそうです。
評価機関によっては、「地場の建具屋さんがつくった木製建具」は、長期優良や低炭素は認められないといってきたようですが、省エネサポートセンターの回答が変わったため、今後はうまく流れていきそうです。(2015/09/04追記)


障子戸は、木製建具に性能を付加できます。

障子戸や雨戸などは、次のような数値になります。

熱抵抗
(m2K)/W
熱貫流率
W/(m2K)
障子 0.1 5.55
シャッター
又は雨戸
0.18 10.0

木製建具を採用した場合、障子戸や雨戸を設けるケースが多く、木製建具に性能を付加できるという点がメリット大です。木製建具に、障子戸を設けると、単純に数値をプラスできるというわけではありませんが、以下のように性能がアップします。

熱貫流率
W/(m2K)
木製複層A10以上2.91
障子 5.55
2.41

付属部材は、障子と雨戸、シャッターが評価可能です。カーテンや断熱ブラインドなど、実際には効果がある商品もありますが、住まい手が容易に取り外しできるモノは、申請上は評価できません。ただ、申請は書類だけの問題なので、実際に入居した際にどのぐらい性能が上がり、快適になるのか見える化することは、とても大切ですしオススメします。

以下は参考値です。

熱抵抗
(m2K)/W
熱貫流率
W/(m2K)
ハニカムサーモ
スクリーン
0.214.67
ダブルハニカム0.333.03
太鼓貼障子0.273.70

土壁の断熱性能

土壁の断熱性能(熱貫流率)は、下図の通り1.5~3.0W/(m2K)程度です。
平成25年の基準値は、0.53W/(m2K)ですので、3~4倍程度性能が低いといえます。

熱貫流率
W/(m2K)
漆喰+土壁90mm
+漆喰 
3.0
漆喰+土壁55mm
+バラ板+ラスモル
2.03
漆喰+土壁55mm
+シージングボード
1.54

木や土、石等の素材しかなかった時代は、土壁も優れた素材だったのですが、時代が変わるにつれグラスウールや発泡系の断熱材が開発され、こうなると、どうしても土壁の性能は見劣りしてしまいます。

義務化になっても土壁の家を造ることができるのか?気候風土適応住宅認定を取得することで建築可能な方向へ

昨年の3月に「気候風土適応住宅の認定のガイドライン」が国交省から所管行政庁へ周知されたことから、気候風土適応住宅の認定を取得すれば、昔ながらの土壁の家も省エネルギー基準をクリアできる道が示されました。

簡単に説明すると、「外皮性能は向上させなくても大丈夫だけど、エネルギーの基準は守りましょう!」という申請ルートが新たにできたわけです。

ただ、気候風土適応住宅認定を受けようと思うと、所管行政庁がきめる策定ルールに適合させる必要があり、ここが一番のハードルになります。現段階(2018年3月31日)で、策定ルールが決まり運用しつつあるのは、1~2の所管行政庁だけだと聞きます。残りの所管行政庁は、動いているところもありますが、まだ何も決まっていないところが大半のようです。

省エネルギー基準が義務化になると言われている2020年まであと2年。エネルギー消費性能計算プログラム(気候風土適応住宅版)が完成したことで、伝統的な建物や地域にこれまで根付いてきた住宅は、これまで通り建築することができそうです。あとは、特定行政庁の策定ルール次第。2020年まで、色々な動きがありそうです。

土壁の背面に断熱材を設ければ、ポリエチレンフィルムが不要。

低炭素建築物認定や長期優良住宅の認定では、グラスウールなどの繊維系断熱材を使う場合、一般的に断熱材の室内側にポリエチレンフィルム等の防湿層を設けないといけません。しかし、フィルムを張って、継ぎ目をテープで塞ぎ、気密を取るという家づくりに対して、抵抗感がある方も多いのではないでしょうか。

そこで、ポリエチレンフィルムを使いたくない方には、土壁という選択肢がでてきます。実は、土壁の場合は、繊維系の断熱材を充填しても、フィルムがいらないという特例があり、防湿層を不要とすることができます。断熱材さえ充填すれば、低炭素建築物認定や長期優良住宅の認定の結露対策は即クリアできます。この土壁のメリットはとても大きいです。

長期優良住宅認定75m2以上、低炭素建築物認定50m2以上。

一般的な情報は、インターネット上で検索すると出てきますのでそちらから情報を入手していただければと思います。
1点だけ注意しておきたいのは、
長期優良住宅は、延床面積75m2以上が条件ですが、低炭素建築物認定は、延床面積50m2以上が条件となります。小さな家を希望し節税対策をされたい方は、低炭素建築物認定を利用されるのが良いのかと思います。低炭素認定は、住宅取得等資金の非課税(贈与)を適用することもできるので要チェックです。

低炭素認定を取得した場合の節税方法の詳細は、平成29年度 国税庁のページへ https://www.nta.go.jp/about/organization/tokyo/topics/check/h29/01.htm

WEBページ内の、平成29年分 「住宅取得等資金の非課税」のチェックシート 新築又は取得用(PDF/441KB)を参照ください。

結果的に、樹脂サッシ単体で設けた場合の性能を上回ることも可能です。

2020年に標準的な新築住宅でゼロエネルギーハウスを実現する基本計画案

ゼロエネルギーとは、暖房、冷房、換気、給湯、照明、家電、その他(調理)等の家で使用するエネルギー消費量を、太陽光発電の創エネを含め、プラスマイナスゼロにすることをいいます。昨今、ゼロエネルギーハウスと呼ばれる住宅の中には、家電の消費量が含まれない住宅もあるため、実際にはゼロエネルギーになっていない住宅もあるようです。

さて、木と土壁の家は、伝統構法であるがゆえ、ゼロエネルギー住宅にすることが難しいような噂もありますが、うまく工夫をすればゼロエネルギー住宅とすることができます。ただ、土壁であっても断熱材はきちんと充填し、太陽熱給湯や太陽光発電などを設置する必要がでてきます。

我が国は、2020~2030年にかけてエネルギー基本計画等における目標を掲げています。資源に乏しい上、原発の事故もあり、省エネルギーは急務です。私達は、将来を見据えて今何をすべきか考える必要があるでしょう。

低炭素建築物認定や長期優良住宅の認定、ゼロエネルギー住宅は、どこに頼むと良いのか?

2020年の義務化に向けて、ハウスメーカーは、ほぼ全棟対応してくると思われます。地場のトップランナーである工務店も補助金の条件で鍛えられているため、そこそこ対応はしてくれると思います。設計事務所は、格差が大きく、意匠系の事務所で低炭素や長期優良の対応をしてくれるところはとても少ないのかと思います。さらに、木と土壁の家となるとかなり絞られてくるのではないかと思います。

低炭素建築物認定や長期優良住宅の認定、ゼロエネルギー住宅のデメリット

省エネルギー性能を評価するためには、詳細な計算が必要となり、結果、費用が発生します。設計費+審査機関の技術審査量+行政への手続きを足すと、40坪の住宅で15~30万は必要になってくると思います。住宅ローン減税や登録免許税などのメリットはありますが、このメリットを活用するため、低炭素建築物認定や長期優良住宅の認定、ゼロエネルギー住宅を無理して取りに行く必要はありません。求めている家の性能が、それらの認定が取れる条件が揃っていて、メリットをうまく活かせるようなら是非オススメします。

  


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