ベネチアに建つ建物の壁がどんな感じで割れているのか調査をしてみました。

2月27日~3月4日までベネチアに行ってきました!

当然ながら、ベネチアといえば煉瓦造の建物がたくさんあるので、仕上げは塗り壁!

壁がどんな感じで割れているのか、色々調べてみました。

以下、色々勝手な見解を述べていますが、個人的な見解なので間違っているかもしれません。

 

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1,ベネチアの街の建物外壁です。

表面の仕上げ材と下地材が浮いています。

レンガの上に、砂漆喰ような素材を塗っています。

スサは入っていません。

 

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2,これは、カルロスカルパ設計のブリオン家墓地にあった外壁です。

日本の漆喰壁でも見られる、細かな割れ?模様が入っています。

砂、石灰、骨材を混ぜて塗っていそうです。スサは、入っているのか入っていないのかわかりませんでした。

水が侵入し、壁内部で膨張して割れてしまったようです。厚みは、3-5mmぐらいです。

何回かにわけて塗っていますが、小口がグレーなので、上塗りだけ茶色に色をつけたものにしているようです。

 

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3,こちらは、カノーヴァ美術館です。カルロスカルパが一部を増築しています。

その増築部の外壁です。

大きめの砂が入っています。これも、石灰に骨材が主素材っぽい。

石がアラワシになっているのは、風化の影響ですね。自然にこうなったようです。

ところどころカビらしき黒ずみがありました。

 

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4,こちらも、カノーヴァ美術館の外壁。

色が、茶色っぽい。レンガ色です。

この手の色の塗り壁はたくさんありました。

レンガ色の土なのか、レンガの余り?なのかを混ぜて塗っているかのような質感です。

これは、石灰に砂、レンガ色の土を混ぜています。

レンガ色の骨材に、石灰(白)を混ぜると、少し色目が白っぽくなると思うのですが、これがそうなった時の色目なのかな?

スサは、相変わらず入っているのか入っていないのかわかりません。

 

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5,こちらは、ベネチアの建物です。

上塗りは、漆喰に寒水のような骨材が入っています。ベージュがきつくムラもあるので、何か色粉?のようなものを使っていそうです。

下塗りは、漆喰に骨材のみ。色はなし。

さらにその下地は、モルタルに似たグレー色で、モルタルを掻き落としたような下地です。

 

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6,こちらも、ベネチアの建物です。

上塗り、下塗りともに、寒水のような骨材が入っています。これまでにみたものより少し大きめです。

下塗りは、寒水らしき骨材が多めで、上塗りは少し少なめです。

下塗りと上塗りは同時期に塗っているようなので、上塗りで剥がれているということは、水湿しがうまくできていなかったのかな?

追っかけて塗ったほうが喰らいつきがよかったでしょうね。

 

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7,こちらも、ベネチアの建物です。

ベージュ、茶ときて、紅色の仕上げ材。

やっぱり下地材は、モルタルに見えます。

色は、均一な色目なので、あきらかに着色料が入っています。

比較的新しい時期に補修されたのでしょう。

 

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8,サンマルコ広場付近にある美術館の中の柱です。

石膏のような質感。手で塗りつけて、通常では使わないコテで、押し付けたような質感。

 

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9,これもベネチアの建物です。

下地のレンガがうっすら見えます。

その上から、石灰と砂を混ぜたものを塗っているようです。

案内してくれた方に聞くと、レンガが重要文化材にあたる素材なので、その上の塗材はあくまで、そのレンガを保護するためだけとして意味するもののようです。

なので、剥がれていても、それほど気にしないそうです。

 

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10,トビアスカルパ設計のアカデミア美術館内部の壁。

ベージュの壁は、カルチェ ラザータという仕上げ方法です。

石灰に大理石の粉を混ぜて塗ったものだそうです。日本の人研ぎと同じやり方っぽいです。

水持ちがよいレンガ下地じゃないとできない仕上げだそうです。

 

黒い壁は、日本の大津壁っぽい仕上がり。とても綺麗でした。

二人×2日間で、約6坪ぐらい塗れるようです。

 

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11、ベネチアの街の床仕上げ

屋外の仕上げです。

レンガか石かを埋めて、同素材の塗材で隙間を埋め、研ぎだしたような質感です。

同素材なので思ったよろ目地が目立たなくて綺麗でした。

 

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12,最後は、再び、カルロスカルパ設計のブリオン家墓地にあった外壁です。

黒い帯の下に水シミ&カビらしき黒ずみができています。

こちらは、案内してくださった方いわく、「補修を失敗したんだろう」ということでした。

ベージュの壁は、少し黒い帯よりも1mm程度出っ張っていたので、雨がかかりになってしまい、黒ずみにいたったように思います。

補修をする際、下地をめくらずそのまま塗ってしまったのかな。

あと、カビが生えるということは、雨水を保水してしまったということなのでしょう。

全体的に、黒ずみが浮いてきているように思うので、それも下地の処理がうまくいっていなかったのでしょう。

 

 

まとめ。

 

ベネチアの建物は、下地はレンガなので「塗」の文化。左官職人の腕が活かせる場がたくさんありました。

ベネチアでは、日本のように、左官屋さんの仕事が減っていくことはないのでしょうね。

伝統的な建物を残すことこそが、左官屋さんの仕事をつくることに繋がるのかもしれません。

 

ベネチアの壁は、日本で使われている素材・壁と多くの共通点がありました。

ひとつ大きく違ったのは、スサが見受けられなかったことです。

割れ止めとして、日本ではつなぎ材として藁スサ等を入れるのですが、ベネチアにはそれらしきものが入っていないようでした。

もしかしたら、入っているかもしれませんが、とても小さなスサなのかもしれません。

ベネチアは、硬水なので割れが出にくいのかも。。。と想像してみたり。

一度、日本の軟水とベネチアの硬水の違いをためしてみたいところです。

 

最後に、

カルロスカルパは、日本で亡くなったのですが、ウィキペディアでは「自殺かも」と書いてありました。

実は、あれは間違いだそうです。

スカルパの息子さん–>元スタッフ–>私、ルートでの情報ですので確かです。