お日さまがたくさん入る案はこれだ!太陽の力を取り込む設計手法24事例@日影図と日照シミュレーション

今回、私が設計依頼を頂いてから行う日照シミュレーションを紹介いたします。このシミュレーションは、15年ほど前から実践している太陽の力を取り込む手法で、NHKのサキドリという番組でも取り上げられました。その放送以降、同様のシミュレーションをする方が増えてはきたものの、住宅設計者でこの図を描ける方も少なく、時間がそれなりにかかるので、今は一部の方だけが実践・検討しているようです。タイトルに24事例と書きましたが、更地の場合と、計画案を落とし込んだABC案の計24カットの図について紹介したいと思います。

  

この敷地は、名古屋にある、マエヤマチョウの家の航空写真です。旗竿敷地で、敷地が45度振っています。周囲は隣家に囲まれており、この敷地でいかにお日さまをたくさん取り込むことができるか検討をしました。プロでも、建物をどこに配置するか迷う敷地です。

GOOGLE MAPより

 

 

敷地に落ちる影を確かめる。冬至・春秋分・夏至、GL+0m、GL+3.1m

まずは、冬至の日影図です。敷地は、更地です。この敷地に隣家の影がどのように落ちるのか検討します。隣家に高さ情報を与えて、ラインを描くと下図のようになります。線は、1.5時間~8時間まで影になるラインを描いており、1.5h、2.0h、2.5h・・・と、30分間隔で影が落ちていることを示します。

スケッチアップやスマホアプリで検討されている方が多いと思いますが、プランニングをする際は不向きです。私も色々シミュレーションをしてきましたが、やはりこの日影のラインを図面に落とし込む手法が一番わかりやすいと思います。

 

 

春秋分の図です。意外かもしれませんが、建物の配置を決める際に一番重要な図になります。冬至12/21頃は、一年で一番、敷地内に影が落ちる瞬間の図なので、冬至よりも春秋分をじっくり見ます。春秋分は、名前の通り、春と秋の日影になるので、幅が広い期間を読み取ることができます。

 

 

夏至の図です。敷地内に落ちる隣家の影がわずかです。敷地が大きいので、影が落ちる範囲は少ないのですが、狭小地だととても参考になります。密集した住宅地や、畑をする際には、参考になる図です。

 

 

  

これは、冬至ですが、地面から3.1mあがった場所の日影図です。2階の床面にどれだけ日が当たるかを確認しています。

 

 

春秋分 地面から3.1mの高さです。この図を見ると、どのあたりに2階を配置すればよいかは一目瞭然です。

 

 

夏至 地面から3.1mの高さです。2階は、ほぼ隣家の影響がなく、自分の建物で日射遮蔽が必要ということがわかります。夏の日射遮蔽は、プランニングをする際に、スケッチアップなどの3Dを使うのが効果的です。

 

 

C案プランニング

冬至0mの図にC案プランを落とし込みました。この敷地の場合、図の左上に影が落ちていないので、この周辺に居室を配置してあげると有効です。水廻りは、右側に配置しています。

 

 

春秋分0mです。この日照シミュレーションを一番重要視しているのが、よくわかる図だと思います。LDKと和室に、たくさんお日さまが入るように計画しています。

 

夏至0mです。敷地の右側に、若干の日影ができています。

 

 

冬至2階3.1mです。お日さまが一番入る瞬間の図です。2階をもう少し左へ寄せれば、たくさんお日さまが入ります。

 

 

春秋分2階3.1mです。2階は、隣家が影になることもなく、お日さまたっぷりです。

 

 

夏至2階3.1mです。夏至の場合は、隣家が影になることもなく、自分の建物の軒庇で日射を遮蔽しなければいけないということが想像できる図です。

 

 

 

B案プランニング

冬至0mです。先ほどのプランとは違い、LDKにお日さまがたくさん入るプランとしました。和室は、畳の部屋で、かつ、非居住スペースなので、右へ配置しお日さまはそこそこ入ればよいという案です。

 

 

春秋分0mです。LDKとそれに面するお庭はお日さまたっぷりです。和室がぎりぎりです。

 

 

夏至0mです。建物を、左側に寄せているので、建物には隣家の影はかからず。

 

 

冬至2階3.1mです。建物を左へ寄せたので、お日さまたっぷりの2階となりました。

 

 

春秋分2階3.1mです。隣家の影は、全く影響なしです。シミュレーションを行うことの重要さがわかります。

 

 

夏至2階3.1mです。春秋分と同じく問題なし。

 

 

A案プランニング

冬至0mです。A案は、和室を右側に配置し、水廻りを左に配置しました。B案と同様に、玄関までの距離を短くした案です。B案より落ちますが、LDKにお日さまがたっぷり入る案です。

 

 

春秋分0mです。和室を下へずらして裏庭をつくったこともあり、和室ヘは少し日が入りにくくなりました。

 

 

夏至0mです。問題なしです。

 

 

冬至2階3.1mです。LDK上部は、吹抜を設けました。こうすることで、部屋の奥の方までお日さまが入るようになります。

  

 

春秋分2階3.1mです。問題なし。

 

 

夏至2階3.1mです。こちらも問題なし。

 

 

まとめ

太陽の力を取り込む設計手法として、冬至・春秋分・夏至の季節を3種、地面からの高さ2種(GL+0m、GL+3.1)のそれぞれで計6種のシミュレーションを行いプランを作成しました。

A案、B案、C案は、それぞれメリットとデメリットがありますが、お日さまがたくさん入る案としては、B案が一番良いという結果。冬期にお日さまがたくさん入ると、日中の室温があがるので、自然エネルギーによる暖房効果が抜群です。

 

日影図による日照シミュレーションは、プランニングをする際は必須です。プロならやらない理由がないというほど有効な手法です。。

これが、パッシブデザイン。

太陽の力を活かした住まいづくりをしたい住まい手は、設計依頼をお待ちしています。(笑)